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「おそ松さん」トド松のキャラブックに掲載の妖怪松ピンナップについてまとめる

昔取った杵柄がありまして、まあありていに言って前ジャンルなんですが(いつまでたっても鵼がでない)、それはともかく、それの影響で妖怪についてまあ普通よりはちょっと詳しいくらいにはなったので、妖怪のピンナップを見たときにウワーーーッて叫んで、ごろごろ転がった後ちょっと調べなおしてみました。石燕先生と水木先生の解釈が多分一般的なので、その辺を中心に。妖怪は、設定ちょっとだけ違うけどほぼ一緒みたいなやつがごろごろいるので、とりあえず顔見て思い浮かんだ、それっぽいやつをいくつか調べてまとめておきました。ざっくり書いてあるだけなので、興味が出たら名前でググってみてください。

わたしが一番叫んだのは化け狐か九尾の狐なおそ松と、なんといっても百々鬼もしくは百目なチョロ松です。

 

ひとまずモチーフとなったであろう妖怪の名前だけ羅列しておきますね。()内は関連妖怪です。

おそ松:妖狐(玉藻前、九尾の狐)

カラ松:天狗?

チョロ松:百目、百々目鬼?

一松:猫又

十四松:ろくろ首

トド松:雪女?

おそ松

おそ松はパッと見で九尾の狐、かとおもったんですがしっぽの数がどう見ても足りないので、たんなる妖狐でしょう。

妖狐は、始めはしっぽが一本で、長生きすればするほど増えていくシステムになっているのが通説なので、三、四本生えているおそ松はそこそこ長生きしたことになります。妖狐は様々な種類がいて、よい妖狐や悪い妖狐、どちらもいるのですが……おそ松は日頃の行いからして悪い方だと考えてもいいのではないでしょうか。

カラ松

カラ松はおそらく「天狗」だと思われます。しかしそれにしては、天狗特有の高い鼻が無かったりするので、どちらかと言えば山伏なのかもしれません。まあ乱暴な言い方をすると、人間か人間でないかくらいで山伏と天狗の違いはさほどないともいえるので……ここは、ひとまず妖怪である周りに合わせて、天狗として考えてみたいと思います。

天狗のルーツは、山から下りてきた外国人だという説が一般的です。赤ら顔、日本人にはいないような高い鼻などをもつ外国人は、妖怪にも見えたのでしょう。

さて、そんな外国人は、いつもわけのわからない言葉を使い、いつもみんなに理解されないファッションや文化を松野家に持ち込むカラ松の姿と重なります。松野家という閉じた場所に、新しい文化(カラ松の趣味はオザキですから時代からすれば古いのですが、松野家にとって未知のものという点で新しい、です)を持ち込み、自分を曲げずいいと思ったことを力押しでみんなに認めさせるのは、かなり、昔の「外国人」観に近いですね。

チョロ松

いよいよチョロ松です。チョロ松は、ちょっと要素が多いうえ、どの妖怪かが判然としないのでややこしいのですが。

ひとまず、チョロ松はたくさんの目が体についていることから「百目」か「百々目鬼」のどちらかだと思います。

さて、二つの妖怪を比較していきましょう。

百目」のほうは、鬼太郎や目玉おやじと同じ、水木しげる先生の創作妖怪だと言われています。とはいえ、姿自体は昔の本にも登場するそうなので、水木先生が作ったのは名前や設定の部分ですね。これは、目がたくさんあって皮がだるだるとした妖怪で、ぬっぺっぽうに目をたくさんつけたようなイメージです。目が多いため、まぶしい昼間には外に出ず夜中に出歩き、百目にでくわした人のうしろを、百目から飛び出した目玉がおいかけるのだそうです。

チョロ松は他の兄弟と比べると周りの目が気になる性質ですので、周りの目を気にして(≒目が多くてまぶしくて)昼間に外に出づらい、と考えると、たしかにチョロ松は百目かもしれない。

 

それから、「百々目鬼」のほうですが、こちらは鳥山石燕先生の本に出てくる妖怪ですね。こちらも設定は石燕先生が作ったという説が有力ですが、全くの創作というわけではないです。「百々目鬼」は、窃盗を犯した女性の腕に目が現れたという妖怪ですね。

チョロ松に罪があるのか、という点は留保するとして(ここはみなさんそれぞれ思うところがあると思うので……)、もしもからだに現れた目がなんらかの罪の象徴であるならば、その目を包帯で巻いて隠しているのも納得。

他には、強い百々目鬼という鬼が現れて平将門に退治される話などもありますが、ここは無視してよいと思います。

一松

さて、ややこしかった(かってにややこしく考えていたともいう)チョロ松と違い、一松は簡単です。モチーフの妖怪は「猫又」。一松が猫であるのは疑いようのない事実ですが、その猫又が「妖狐」と同じように長い間生き残ると、猫又になるのです。単純に猫だから猫又、でもいいですし、一松はブラック工場などを見ていても真面目であるので、こつこつ頑張っていれば必ず報われて妖怪になることができる「猫又」は一松にピッタリであるとも言えます。

十四松

さて、十四松のモチーフは疑うべくもない「ろくろ首」ですね。

ろくろ首はそもそも首だけが飛ぶ妖怪だったのですが、いまの首が伸びる形が一般的になりました。ろくろ首はやはり有名な妖怪だけあり、様々な話があります。例えば、ろくろ首が飛ばしているのは「首」ではなく「魂」である、という話とか、ろくろ首は首を伸ばして行燈の油を舐める、だとか、ろくろ首は妖怪ではなく普通の人間である、とか。

このへんが十四松の、超人的と見せかけて本当は普通の人間である、という、関節が柔らかいけど人間だよ、というあたりなのでしょうか。ただ、関節がぐにゃぐにゃだからイラストとして相性がいいとして割り振られただけかもしれませんね。

ろくろ首自体有名ではあるのですが、わりと個性がバラバラでろくろ首といえばこういう性質!というのが少ないのでキャラクター性が少ないのがむずかしいですね。

トド松

トド松は、おそらく「雪女」がモチーフだとはおもうのですが、果たして雪女自身が氷漬けになるのか?という面で少々疑問が残ります。雪女と言えば、美しい女が訪ねてきて、家にあげたらのちのち雪女だとわかるもの、逆に言うと一目見ただけでわかるような雪女の特徴はないといっていいです。なので、いかにも特殊能力を持っているふうに自らを氷か何かで覆う、というのは雪女としては少々不自然かなあと思います。

ともかく、雪女の特徴をとりあえずまとめておきます。雪女はたいてい吹雪の日にやってくるとんでもない美人だとされています。水をくれと言ってきた雪女に水をやると殺されるが、お湯をやると雪女は消えてしまう、だとか、雪女と知らず子供を作ったが雪女だとばれた瞬間どこかへきえてしまうという鶴の恩返し型の話だとか。

自己認識が「松野家のルックス担当」なトド松のことですから、妖怪という人と違う存在ながら、美しく人を魅了する「雪女」をモチーフに選んだのかもしれません。